早稲田大学合気道会 創立65周年記念祝賀会のご報告

2025年6月29日に「早稲田大学合気道会創立65周年記念祝賀会」がリーガロイヤルホテル東京において執り行われました。

ご来賓に植芝守央道主、植芝充央本部道場長をお迎えし、当会名誉師範の多田宏九段、当会会長の北川佳世子早稲田大学法科大学院教授にもお越しいただきました。(植芝道主のご祝辞と、多田師範のお言葉は別掲のとおり)

OBOG、現役学生と併せて総勢150人以上が集い、盛況な会となりました。

今回の祝賀会に合わせて多田師範からいただいた揮毫「顯幽一如」の文字を手拭にして参加者に配布いたしました。参加者全員の記念撮影で、祝賀会を締めくくりました。

 (三十代 石岡光喜 稲門合気倶楽部副幹事長)

これより先は、植芝守央道主によるご祝辞と、多田宏名誉師範のお言葉のご紹介、および祝賀会で撮影したスナップ写真を掲載いたします。(55代 鈴木宗典)

植芝守央道主 ご祝辞

植芝守央道主

早稲田大学合気道会創立65周年おめでとうございます。

このような輝かしい伝統が築かれましたのは、まず大学の合気道に対するご理解だと思います。初代会長の渡部先生から現在の北川先生にいたるまで、非常に合気道を理解してくださっています。

それから、多田先生をはじめとする指導者の方々が情熱をもって合気道に取り組んでくださったこと、各代の皆様方が真摯に合気道の探求を続けてくださったことがこの65周年という輝かしい伝統を作り上げられたと思います。

現在、合気道は世界140の国と地域に大きな輪ができあがっております。当初は欧米が中心でしたが、現在は、アフリカ、中東、中央アジア、中南米など日本ではなじみの薄い地域でも、しっかりと合気道が理解されてきております。このような大きな普及振興ができたのはいろいろな要因がございます。その中で早稲田大学合気道会の皆さんが大変な尽力をしてくださっていると思います。

まず卒業されてからも合気道を続けてらっしゃる方、各地域で指導者的な立場に立ってらっしゃる方がたくさんいらっしゃるということ。また、合気会の理事評議員をお引き受けいただいている方々、また、本部道場の指導員をしている方など、合気道・合気会の運営等々いろいろと尽力してくださっております。それから、今から64年前に関東学生合気道連盟が発足するわけですが、その発足にあたりまして早稲田の合気道会の皆様が中心となって作られ、現在全国学生合気道連盟は110以上の加盟校となっていて、また委員長をたくさん輩出している。

このように、早稲田大学合気道会は合気道の普及振興の中心的な形で進んできていただいています。今日の合気道の一翼を担っていると言っても過言ではないと、私は思います。

これからは、もちろん日々の稽古を大切にされて、正しく良い形で次の世代へ繋いでいってほしいと思います。これからの早稲田大学合気道会の益々の発展を祈念申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。おめでとうございます。

多田宏 名誉師範のお言葉

多田先生のお言葉のニュアンス、温かみをお伝えするため、録音音声を元に、なるべくそのままの形で文章にしました。途中、録音状況の関係で聞き取ることが難しく、こちらでご紹介できない部分もございますことご了承いただければと存じます。(55代 鈴木宗典)

ー多田先生のお言葉全文ー

多田宏先生

合気道会65周年おめでとうございます。

今から65年前、縁あって皆さんと稽古を始めました。その時私は30だったんですね。ちゃあんと65年後に95歳になってる。みんなの顔をみれば分かるけど、ちゃあんと80いくつになっていたり。

植芝盛平翁先生のお教えを受けることになったのは、大変幸せなことであるとよく噛みしめていただきたいですね。私はみんなと稽古を始めたその4年後、昭和39年、東京オリンピックの年にヨーロッパに渡って、6年戻ってこなかった。その間に植芝盛平翁先生がお亡くなりになるんですよ。イタリアで地方を回って帰ってきて、みんなであれしたことを覚えています。

植芝盛平先生の教えは単なる武術や健康法じゃありませんよ。全部に関係がある。命の力の鍛え方、高め方、その応用方法ですよ。

だから言っておきますけどね、大学時代に(合気道を)やるのはいいけど、勉強もしとけよ。学校を出てから運動やなんやらを役に立たないという人がいるけどね、気をつけないといけないよ。合気道をやると「金剛力」、金剛のような力と金剛のような智慧というものが出てくるんですよ。金剛はダイヤモンドだよ。合気道ってのはね、人間をダイヤモンドのようにする訓練法ですよ。

ヨーロッパ人は気付いていますよ。今ヨーロッパのトップの人間はね、ほとんど学者、それも物理学者、あるいは科学者、医者です。日本ではあまりそう思わないけど、医者は科学者なんですよ。

ヨーロッパには気という概念、言葉、文化、文明がないってことです。ヨーロッパにないということは、ヨーロッパの植民地だった全アフリカ、南北アメリカ、オーストラリアにも気という発想とか考え方がないんです。それだけじゃない。ヨーロッパで発生した文化、例えば科学の中にも気という考えがないんです。(考えが)ないからといって、気がないわけじゃあないんだよ。ちゃんと気は(この世界全体に)あるんです。ただ科学というものは五感の感覚で捉えられないものはオミットするから、(気という考えが)出てこないんです。

でも、今に(科学にも気という考え方が)出てくる。なぜか。見えない世界の物理学、いわゆる量子論や量子力学が発達したから、その影響が合気道の会にも来ているのです。

今ヨーロッパの先端の人間はね、一生懸命合気道をやります。翁先生がおっしゃったように、「合気は禊である」。禊ってのは神道的な言葉ですが、広く解釈すればメディテーションですよ。ただ東洋のそれとヨーロッパのそれは違います。

皆さん学生の人が大学を出てこれから貿易会社に入ると、外国に行きますね。合気道はどんどん極めたら良いです。(大学で)ちゃんとね、教わった通りにやればどこの世界でもできる。ただ気をつけないといけないことは、ただ準備体操をやって技をやるだけでは、向こうの人は向こうの人なりに(合気道は)気というものがないスポーツだと思いますよ。

困るのは、日本の政府が日本の伝統文化について理解が足りない。イタリアが大変だったのですよ。私は公益法人を作るのにね、最初は(大使館の人から)「学校関係(の団体)であれば公益法人はすぐ取れる」(と言われた)。ところが、大使館の許可が下りた時にその人が亡くなってね、合気道は日本の本当の伝統文化をやるんですが、(公益財団法人を取るのに)14年間かかったよ。なぜか。文化には政治と思想がある。「あなたが教えている日本の伝統文化をイタリアの中でやるにはどういう条件が必要か」そういうところについて、細かく大統領の審査があるんです。それで14年もかかった。

私ね、最初はヨーロッパをぐるっと回って帰って来る予定だったのが今でもイタリアと付き合うことになる。ところが、さっきの話ですけどね、最先端の人たちは今までの科学の世界はもちろん大事だ。でも、そこまででは決して本当の人間の最終的な智慧、金剛のような智慧というようなものは来ない。気の働きがないからですよ。気っていうのは、我々は、宇宙の気、宇宙の子である。我々が合気道をやっているということは、宇宙の子として、宇宙の進化向上に寄与するため。だから宇宙が持っている時間も空間も天地も全部持ってるんですよ。何かが上達するってことは宇宙から与えられている、(2000年ほど前から伝わる「宇宙」という言葉のご説明)だから、ヨーロッパでは弥生時代くらいからやってきた競技大会の文化が、日本で始まったのは明治維新以降ですよ。

我々はそういう2000年前から続く東アジアの宝石のようなものを、学生時代から因縁によって習っていられる。だからその中では健康法であるとか、「80過ぎたから腰が痛い」なんて言ってられないよ。100歳から見たら80歳なんてまだ子供だからね。無茶をしちゃいけない。だけど丁寧に丁寧に明るくほがらかに仕事をやる。古い植芝道場に入った人は知っているけど、(道場には)「稽古は楽しく行うこと」と貼ってあった。珍しい道場だと思ったよ。

指導者の教えは教えの一端にすぎない。あとはよく(自分で)研究しろと。我々は合気道をしっかりやるにはそういう、本当を言ったら大変な世界なんですよ。合気、神と人との合気。中国では天人合一、中庸のね。(インドでの合気という言葉のご説明)合気道は、ものすごい世界の思想の屋根がずーっと覆われた中で活動してるんです。そういう大きな道をお互い得たということは非常に嬉しいことであり、楽しいことです。これからも一生懸命お互いやっていきましょう。道を明るくのびのびと朗らかにやっていく。我々は大きな宇宙の智慧と力と繋がっている力の結晶だ。

繰り返しになるけど、向こうの学者が合気道をやっているのは金剛力、金剛智が欲しいからだよ。宇宙のインスピレーションを一億分の一聞いたんじゃ分からない。ところが時間と空間でもってそれが十分の一秒、百分の一秒になったらぱっと届くことができる。早稲田の野球部を作った人が「バッターボックスに入ったら無念無想」本当は野球はゲーム、遊びだからヨーロッパ人は無念無想なんて言わない。だけど日本人がやったら「そうすれば、ボールは止まって大きく見える。だから打てるんだ」と言う。翁先生もおんなじだ。「相手が早ければ早いほど止まって見える。ゆっくり見える」そういう世界の中で自分自身が一生懸命やると。

宇宙の進化と向上に寄与するために大自然が与えてくれている自分の中の時間と空間を上手に(使って)行っていく。そういう尊い立場を与えられている。それをはっきり自覚して元気にやっていく。それには仲間があることがとってもいい。だから、仲間を大事にして励んでいきましょう。明るく朗らかにやっていく。

これからも大いに発展を期待しています。

記念祝賀会の様子

植芝守央道主
植芝充央 本部道場長
多田宏先生
早稲田大学合気道会 北川佳世子会長
北川会長と後藤喜一師範
稲門合気倶楽部 志原篤司会長
早稲田大学合気道会 67代 馬場啓主将